看護師が不足している原因と看護師不足が原因で起こること

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現在、日本では看護師不足が深刻化しているという話を聞いたことがありませんか?どこの病院や医療施設も、常に看護師の募集を出している状態です。しかし、最近は新たな看護大学がたくさんできているので、本来であれば看護師の人数に余裕があると思います。なぜ、看護師が不足しているのか、看護師が不足することでどのような影響があるのか見ていきましょう。

看護師の現状

毎年、多くの看護学生が国家試験に合格し、多くの看護師が誕生しています。平成24年に行われた調査によると、新規資格取得者は約5.1万人(看護師約3.8万人、准看護師約1.3万人)いるということが分かりました。

出典:看護職員の現状と推移 3ページ目

看護師を養成する学校は、准看護師養成所は減少していますが、4年生看護大学は増加しています。厚生労働省医政局看護科が公開している看護師国家試験合格者数の推移に関するデータによると、平成7年の看護師国家試験の合格者数は40,822人、平成15年は49,714人、平成25年は50,232人ということが分かりました。

出典:看護職員の現状と推移 17ページ目

合格者数が減少している年もありますが、徐々に国家試験合格者数は増加しています。また、看護師は離職率が高いことも知られていますが、実は看護師の離職率は年々減少しています。そのため、看護師の数が不足する状況とは考えにくいですよね。実は、看護師全体の人数は毎年増加しています。日本看護協会の報告によると、看護師と准看護師の総数は平成18年末に1,258,605人でしたが、平成27年には1,535,161人となっています。

出典:日本看護協会 看護統計資料 看護師、准看護師就業者数

約10年の間に275,511人増加しているのに、なぜどこの病院や医療施設も看護師が不足している状況となっているのでしょうか。

看護師が不足する原因

看護師国家試験の合格者数は毎年増加していますし、離職率は新卒・経験者ともに減少傾向となっています。また、看護師全体の数は年々増加しているはずです。それなのに、看護師不足が解消されないのには理由があります。看護師不足が解消されない理由で考えられるものをいくつか紹介します。

潜在看護師の増加

看護師全体の人数は年々増加していますが、すべての看護師が病院や医療施設に勤務しているわけではありません。実は、看護師の資格を取得していながら、勤務していない看護師が非常に多いのです。皆さんは「潜在看護師」という言葉を聞いたことがありませんか?潜在看護師とは、「看護師の免許を持ちながら、自身の体調や家庭の事情などがあり看護師として仕事をしていない看護師のこと」を言います。平成24年に厚生労働省が発表したデータによると、潜在看護職員(看護師、准看護師、助産師、保健師)の合計は約71万人いるということが分かりました。

出典:看護職員の現状と推移 3ページ目

平成24年度の就業者の総数が約154万人ですので、看護師の免許を保有している人の約3分の1が現在看護師として勤務をしていないということが分かります。このデータを見ると、潜在看護師は非常に多いですよね。

厚生労働省は、「団塊の世代が後期高齢者となる平成37年には、看護職員は196万人~206万人必要であるとされています。就業者数は、年間平均3万人程度増加していますが、このペースで今後増加しても平成37年には3万人~13万人不足すると考えられます」と公表しています。

出典:厚生労働省 看護職員確保対策

もし、潜在看護師の方が半数でも職場復帰をすれば、看護師不足が解消されるのではないでしょうか。潜在看護師が職場復帰をしやすくするために、2015年10月1日から「看護師等の届け出制度」という新たな制度が開始となりました。看護職とナースセンターが離職後も“つながり”を持ち継続的なキャリア支援や迅速な復職支援を可能にすることを目的として作られました。届け出た看護師に対し、研修や交流会などの情報をタイムリーに提供し、復職を希望した際には、無料職業紹介や服飾支援研修などの機能を生かし、迅速・丁寧な支援が行われるようです。

出典:日本看護協会 看護師等の届け出制度 1ページ目

離職しているすべての看護師が登録することで、潜在看護師の人数が減少するかもしれませんね。

復職しにくい環境

潜在看護師を減らす取り組みがされていますが、現状は潜在看護師が復職しにくい環境と言えるのではないでしょうか。

子どもの預け先の確保が困難

平成26年度の統計によると、就業している看護職員全体の人数1,603,108人のうち、男性看護職員の人数は97,781人ということが分かりました。

出典:日本看護協会 看護統計資料
https://www.nurse.or.jp/home/statistics/pdf/toukei01.pdf
https://www.nurse.or.jp/home/statistics/pdf/toukei05.pdf

男性看護職員が年々増加しているといわれていますが、看護職員全体のうち男性は約6%しかいません。看護師という職業は女性の割合が圧倒的に多いため、どうしても出産による多色が増加しているのではないでしょうか。特に、最近では全国各地で保育所不足が問題となっています。院内保育園を完備している病院や医療施設もありますが、まだまだ数は足りていません。そのため、子どもの預け先を確保することが困難で、看護師として復職したいのに復職できないという状況があると考えることができます。

子どもの預け先の確保ができなければ、子どものいる看護師の潜在看護師からの復職は難しいのではないでしょうか。

知識や技術への不安

医療は日々進歩しているため、看護師は常に新しい知識や技術を身に着けていかなければなりません。しかし、少しでも看護の現場から離れた期間があると、自分の知識や経験・技術に不安が生じます。また、医療の進歩に伴い、看護師に求められる知識や技術はどんどん高度なものに変化していますので、離職している期間の遅れを取り戻すだけでは看護師として仕事を行うのは難しいのです。

最近はブランクのある看護師を対象とした採血や留置針の挿入などの医療行為に関する研修が行われている施設等がありますが、「できなかったらどうしよう」という不安が、看護師としての復職を阻害しているかもしれません。

希望条件に近い就職先がない

体調や家庭の都合等で、働く際の希望条件は異なると思います。しかし、通勤できる範囲に、自分が希望する条件の職場がない場合が多いのではないでしょうか。あなたが希望する条件で就職を希望している看護師は大勢いると思いますし、みんなが理想とする職場の場合、定員に空きが出にくい状態です。その結果、看護師の募集が行われている職場は、みんなが希望しない条件のところばかりとなっている可能性があります。

「希望条件を妥協してまで看護師に戻りたくない」という方もたくさんいますので、みんなが理想とする条件の職場が増えなければ、潜在看護師が今後も増加するのではないでしょうか。

7:1看護が推奨されている

平成18年度に行われた診療報酬の改定で、看護師の配置基準が改められました。改定前までは、急性期病院の入院患者さんに対する看護師の配置基準は、最も高い場合で10:1(患者さん10人に対し看護師一人)でした。しかし、看護師一人にかかる負担が強く、患者さんに対してより手厚い看護を提供するために、看護師の配置基準は7:1に変更され、この基準を満たせば高い診療報酬を得ることができるようになりました。

確かに一人の看護師が担当する患者さんの人数が少ないほうが、手厚い看護を提供することができるようになりますし、看護師一人当たりにかかる負担が軽減されます。しかし、制度が始まったと同時に、たくさんの病院が看護師を確保する必要が出てきました。特に、大学病院や市民病院などの規模が大きく入院患者数が多い病院の場合、より多くの看護師を確保する必要がありました。

毎年看護師免許を取得する看護師の人数は限られているのに、10:1看護から7:1看護外推奨されるようになったため、どこの病院も看護師が不足するようになりました。また、都市にある規模が大きな病院の場合、看護師を集めるために福利厚生を充実させるなどの対策が取りやすいため、自然と看護師が集まって7:1看護を実施しやすいようです。しかし、交通の便が良くない病院や規模の小さな病院の場合、看護師が集まるような対策をとることが困難です。そのため、このような病院の場合、看護師不足が深刻化視野宇い傾向にあります。

看護師が不足することによる影響

いくつかの要因があり、看護師の人数は全体的に不足しています。では、看護師の人数が不足することでどのような影響があるのか見ていきましょう。

看護師一人にかかる負担・責任が増える

看護師の人数が足りないからと言って、病院側は入院患者さんの人数を減らすわけではありません。看護師の人数が少ない場合、看護師一人にかかる負担や責任が重くなってしまいます。また、看護師の配置基準を満たすぎりぎりの人数でシフトを組んでいる病院の場合、体調不良などで欠員が出た場合、基準以下の人員で看護を行うこともあります。看護師の仕事は常に患者さんの状態変化に気を配ることが必要ですので、看護師の人数が少なければ看護師一人にかかる負担や責任は重くなってしまいます。

また、時間内に看護以外の業務を行うことが困難となり、カルテの記入や勉強会の資料作り、サマリーの作成、委員会活動などの業務を仕事の時間内に行うことが難しくなります。そのため、時間外業務や休日出勤などを行わなければいけない状況となるのではないでしょうか。また、夜勤の「72時間ルール」を守ることができず、過剰な夜勤を行う必要も出てきます。

患者さんに行う看護の質の低下

看護師一人が担当する患者さんの人数が増えると、患者さん一人にかかわることのできる時間は短くなってしまいます。しかし、患者さんに行わなければならないケアや医療行為はあらかじめ決まっています。そのため、看護師の人数が不足すると、患者さん一人にかけることのできる時間は短くなってしまうのです。

短い時間でケアを行うと、自分では丁寧に行っているつもりでも患者さんからすると雑に感じることがあるかもしれません。また、医療行為を行う際に焦ってしまうと、医療ミスを起こしてしまうことにつながる可能性があります。さらに、ケアや医療行為を行いながらナースコールの対応を行う必要があるので、ナースコールをとることが遅れて患者さんに迷惑をかけることにもつながるのではないでしょうか。

さらに看護師が不足する

看護師が十分に在籍している病院の場合、看護師一人当たりにかかる負担は軽減されますし、有給休暇や長期休暇を取得しやすくなるというメリットがあります。また、看護師が十分に在籍していれば、これらのメリットを求めてほかの病院からも看護師が転職してくることがあり、さらに充実した看護師の人数となります。

しかし、看護師が十分に在籍していなければ、看護師一人にかかる負担や責任は大きくなり、有給休暇も長期休暇も取得できない状況となってしまいます。このような環境で勤務していると、「もっと看護師が大勢いる病院で勤務をしたい」と思うようになるのではないでしょうか。その結果、看護師が不足している病院はさらに看護師が不足し、看護師が十分に在籍している病院はさらに充実するということにつながります。

看護師不足を解消するためには

看護師が不足すると、様々な面に影響が出てしまいます。では、看護師不足を解消するためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。

男性看護師の増加

女性は結婚や出産などの家庭内での役割の変化に伴い、仕事を行うことが困難となる状況が発生しやすいです。また、女性の多い職場は何かとトラブルが発生しやすく、人間関係によるストレスが原因となり、退職を考える看護師が非常に多いです。

一方、男性看護師は結婚や出産などで退職が必要となることはほとんどないため、潜在看護師の男性は非常に少ないです。また、女性ばかりの職場よりも、男性が在籍している職場のほうが人間関係でのトラブルは少ないです。そのため、看護師の離職防止や潜在看護師の増加防止につながるのではないでしょうか。

待遇の改善

誰もが待遇が悪い病院よりも、待遇のいい病院に勤務したいと思いますよね。そのため、看護師不足を解消するには、他の病院よりも待遇をよくする必要があります。しかし、他の病院よりも非常にいい待遇とした場合、病院自体の経営が難しくなることも考えられます。そのため、「有給休暇の消化率を上げる」や「夜勤は月に72時間以内」、「残業が少ない」などのすぐにできる待遇改善を行うことが大切です。

病院全体の待遇が改善すれば、就職や転職を希望する看護師は増え、看護師不足が解消されやすくなるのではないでしょうか。

復職するための支援

看護師は不足していますが、潜在看護師が復職すると看護師不足は解消されます。遷座看護師が復職をためらう理由には様々なものがありますが、自分の知識や技術に不安を感じて復職できない方も非常に多いです。潜在看護師やブランクのある看護師のための復職支援の一環として、勉強会や実技講習会が開催されている機関もあります。しかし、費用が掛かることや、近場でこれらの研修が行われていないなど、知識や技術を再度学ぶ機会があまりありません。そのため、あまり費用が掛からない研修を増やすことや、多くの会場で研修を開催するなどの取り組みがあればいいのではないでしょうか。

また、出産や子育てのために離職した看護師の場合は、子どもの預け先の確保が必要となります。そのため、保育所が併設されている病院や医療施設がもっと増えると、出産や子育てによって離職した方が復職しや少なるのではないでしょうか。

まとめ

毎年大勢の看護師が誕生していますが、離職し潜在看護師となる看護師の増加や復職しにくい環境などから、看護師不足はなかなか改善されません。看護師が不足すると、スタッフが困るだけでなく患者さんに迷惑が掛かってしまいます。看護師不足が解消するような取り組みを、国や各病院・医療施設が積極的に行うことで、看護師不足が解消されるかもしれませんね。

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