看護師は保険に加入した方が良い?経験者が保険について解説

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皆さんはもしもの時に備えて賠償責任保険には加入していますか?職場によっては、医療関係者全員に保険への加入を強制していることもあるのではないでしょうか。何か医療ミスや医療事故を起こして患者さんたちへ何かしらの被害が及んだ場合、最近は看護師も訴えられるケースが増えています。禁固刑となるだけでなく、看護師個人へ賠償金を請求されることもあるようです。

看護師が賠償責任保険に加入したほうがいい理由や看護師にオススメの賠償責任保険、実際に看護師が賠償金を請求されたケースなどを紹介します。まだ賠償責任保険への加入が済んでいない方は、この機会に保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか。

【なぜ賠償責任保険に加入したほうがいいの?】

まず、なぜ看護師は賠償責任保険に加入したほうが良いのか見ていきましょう。

皆さんは看護師として働きだしてから、インシデントやアクシデントを起こしたことはありませんか?勤続年数が長くなればなるほどインシデントやアクシデントを起こした回数は増えますし、経験年数が長くなればこれらのミスを起こさなくなるというわけではありません。2014年に行われた調査によると、調査期間中6か月間にインシデントやアクシデントを起こしたと回答したのは回答者の74.0%で、平均回数は2.2回、年齢にバラつきはあまりないということが分かりました。

出典:看護職がインシデント・アクシデントを繰り返す要因に関する研究 3ページ目 4ページ目

どんなに注意をしていても、看護師としての経験が豊富だったとしても、誰もがインシデントやアクシデントを起こす可能性があるということが分かるのではないでしょうか。

多くの場合、インシデントやアクシデントを起こしたとしても、患者さんに重大な被害が及ぶということは無いと思います。院内で生じたインシデントやアクシデントをまとめた資料を見ても、重大な被害が生じたものは少ないのではないでしょうか。しかし、誰もが絶対に患者さんへ重大な被害が生じるアクシデントをおこさないということはありません。どんなに細心の注意を払って仕事をしていたとしても、謝罪だけでは済まないようなアクシデントを起こす可能性が誰にでもあります。

あってはならないことですが、このような「もしも」の時に備えて賠償責任保険に入っておいたほうが安心することができますし、自分のためにも患者さんのためにもなります。

【賠償責任保険とは】

賠償責任保険とは、日常生活で他人に対して何らかの賠償を支払わなければならなくなった場合に備え、あらかじめ加入しておく保険のことです。加入する賠償責任保険によって使用できる状況や、保険の対象となる金額の上限は異なりますが、自分の出費を最小限に抑えることができるため、非常に心強い存在となります。

「自分は賠償を払うことなんてないだろう」と考える方が多いと思います。しかし、「自転車で走行中に人にぶつかって転倒させた結果、大けがをさせてしまった」ということや「飼い犬の散歩中、犬が近所の子供にかみついてしまった」など、身近に起こりうるトラブルでも賠償が発生することがあるかもしれません。私たちの身近には、常に様々なトラブルが潜んでいるため、「絶対に賠償が発生することは無い」と考えていてはいけません。

賠償責任保険には「個人向け賠償責任保険」や「一般企業向け賠償責任保険」、「専門職業人賠償責任保険」など様々な種類がありますので、加入する際には自分にどの保険が必要なのか、しっかり検討する必要があります。

【日本看護協会の看護職賠償責任保険制度】

看護師の仕事は、患者さんの命と向き合う仕事です。毎日の看護ケアや医療行為、日常生活の援助など多くの仕事を行いますが、その中で上でも紹介したようにインシデントやアクシデントを起こした結果によって、患者さんに重大な被害を与えてしまう可能性がだれにでもあります。最近は高度な医療が提供されるとともに看護師個人の判断で行う業務が昔と比べると多くなっているので、看護師個人が責任を負うことが求められるようになりました。

日本看護協会は看護師が安心して仕事ができるよう、独自の賠償責任保険を設けています。日本看護協会の賠償責任保険について、特徴をみてみましょう。

〈名称〉

看護職賠償責任保険制度

〈対象〉

日本看護協会会員(※開業助産師を除く)

〈掛金〉

17カ月3,700円(保険料2,500円運営費1,200円)

〈補償内容〉

対人賠償:誤った薬剤を投与してしまい、患者に障害を負わせてしまったなどの場合。

1事故5,000万円 保険期間中1億5,000万円まで補償。

対物賠償:うっかり患者の眼鏡を踏み破損してしまったなどの場合。

1事故50万円まで補償。

初期対応費用:1事故250万円(うち見舞い品購入費用10万円)

人格権侵害:患者との会話において、名誉を傷つけられたと訴えられたなどの場合。

1事故50万円 保険期間中100万円まで補償。

〈保険金対象外〉

  • 保健師助産師看護師法の規定に違反して行った看護業務に起因する賠償責任
  • 故意に起こした事故による賠償責任
  • 業務の結果を保証することにより加重された賠償責任
  • 海外での看護行為    など

〈支払われる保険金の種類〉

・法律上の損害賠償金

被害者の治療費・入院費・慰謝料・休業補償・被害財物の修理費など

・争訟費用

訴訟費用・弁護士報酬・仲裁・和解・調停に要する費用など

・初期対応

事故調査費用・通信費・見舞金・見舞い品購入費用など

・人格権侵害

名誉棄損または秘密漏洩に起因する賠償費用

〈ほかの賠償責任保険との違い〉

・医療安全に詳しい相談員がアドバイスしてくれる加入者専用窓口を設けている

医療事故が発生した直後から解決までの全プロセスにおいて、相談対応・支援を行ってくれます。また、補償対象となる医療事故だけでなく、毎日の看護業務の中で生じる医療安全に関する出来事についても相談対応・支援を行ってくれます。

・賠償責任の内容が妥当であるかチェックしてくれる

自己審査委員会を通して、公正な審査を行ってくれます。

・医療事故に関する情報提供をしてくれる

「看護職賠償責任保険制度News」の発行や研修の開催などを通して、医療安全に関する情報を提供しています。

日本看護協会の賠償責任保険制度は比較的掛金が少ないですし、専門的なアドバイスを受けることができます。まだ賠償責任保険に加入をしていない方は、日本看護協会の賠償責任保険制度への加入を検討してみてはいかがでしょうか。

公式ホームページ:https://li.nurse.or.jp/about/index.php

【看護師にオススメの保険】

日本看護協会の賠償責任保険制度以外にも、看護師にオススメの賠償責任保険があります。加入を検討している方は、補償内容や掛金などを比較してみてくださいね。

株式会社エージェント (東京海上日動火災保険会社)

〈名称〉

看護職賠償責任保険

〈対象〉

看護師・准看護師・保健師・助産師

〈掛金〉

12か月4,780円

〈補償内容〉

基本契約:1事故1億円 保険期間中3億円まで補償

財物損壊:1事故・保険期間中100万円

人格権侵害:1事故1億円 保険期間中3億円まで

初期対応費:1事故500万円(見舞い費用は1被害者あたり10万円が限度)

〈補償対象外〉

・契約者または被保険者の故意

・美容を唯一の目的とする業務

・看護業務の結果を保証することにより加重された賠償責任 など

URL:http://www.a-gent.co.jp/medical/nurse/index.html

ウィルネクスト(東京海上日動火災保険)

〈名称〉

看護職向け賠償責任保険

〈対象〉

看護師・准看護師・保健師・助産師(開業助産師は除く)

一般社団法人日本看護学校協議会共済会の会員

年齢制限なし

〈掛金〉

Aプラン:12か月2,900円

Bプラン:12か月3,360円

〈補償内容〉

・Aプラン

対人事故:1事故5,000万円 保険期間中1億5,000万円まで

対物事故:1事故・保険期間中50万円

人格権侵害:基本契約に同じ

初期対応費用:1事故500万円(見舞い費用は1被害者あたり10万円が限度)

受託物:1事故20万円(保険期間中1億円)

錠交換費用:1事故・保険期間中1,000万円

・Bプラン

対人事故:1事故1億円 保険期間中3億円まで

対物事故:1事故・保険期間中100万円

人格権侵害:基本契約に同じ

初期対応費用:1事故500万円(見舞い費用は1被害者あたり10万円が限度)

受託物:1事故20万円(保険期間中1億円)

錠交換費用:1事故・保険期間中1,000万円

URL:https://www.medic-office.co.jp/willnext/nurses/

【実際に看護師が賠償金を請求されたケース】

ここまで看護師が賠償責任保険に入ったほうが良い理由や、看護師が入ることのできる賠償責任保険について紹介しました。しかし、「本当に必要なの?」と考える方がいると思います。実際に看護師が賠償金を請求されたケースについて紹介しますので、賠償責任保険が本当に必要か検討してくださいね。

ケース1:入院患者が誤嚥して窒息したケース(平成19年6月)

患者A(大正12年生まれ、老人性痴呆、前立腺医大、高血圧などの既往症あり)

平成16年1月12日、担当看護師のOが患者Aに対して夕食におにぎりを提供した。その際に患者Aは「義歯を入れると痛い」といい義歯御装着を拒否したため、義歯を装着しなかった。看護師Oが患者Aの病室を離れている間に患者Aはおにぎりを誤嚥して窒息、心肺停止状態となり意識が回復しなかった。その後患者Aは意識が回復しないまま、同年10月10日、呼吸不全で死亡した。以下の金額を看護師Oと使用者であるY県に対し請求。

損害賠償請求額:遺族の請求額4050万9,500円

(患者固有の慰謝料3,000万円+遺族固有の慰謝料500万円+逸失利益1,097万8,6707円+入院雑費40万9,500円+葬儀費用150万円+弁護士費用360万円=5,148万8,170円)

判決による請求容認額:2,882万8,613円

(患者固有の慰謝料1,600万円+遺族固有の慰謝料100万円+逸失利益731万9,113円+入院雑費40万9,500円+葬儀費用150万円+弁護士費用260万円)

ケース2:蕁麻疹患者に准看護師が薬剤を誤投薬したケース(平成17年7月)

事故当時6歳の患者Xは、平成13年1月、体中に赤い発疹のようなものが出たため、Y病院においてY2医師の診察を受けた。Y2医師は蕁麻疹と診断、A看護師に対して「塩化カルシウム注射液」を5分かけて静脈注射するように指示したが、A看護師は同指示を診療録に記載したうえで、処置室に診療録を持参してY3准看護師に静脈注射を行うように申し送った。Y3准看護師は塩化カルシウム液と「塩化カリウム液」を誤解し、患者Xに対して原液のまま静脈注射した。この際、Y2医師は注射に立ち会っていなかった。

患者Xは心肺停止状態に陥り、心臓マッサージや案ビューバック装置で蘇生措置を行ったあと、B病院に搬送されたが、急性心停止による低酸素脳症を発症し、両上肢機能全廃、両下肢機能全廃、体幹機能障害の後遺症が残り、身体障害1級の認定を受けた。

患者X両親はY2医師、Y3准看護師及び使用者であるY医療法人に対しては不法行為に基づく損害賠償を、Y医療法人に対しては診療契約に基づく調査・報告義務がされなかった債務不履行に基づく損害賠償雄それぞれ求めて訴えを起こした。

患者の請求額:計2億4,802万7,695円

(治療費92万1,820円+付添看護費139万+入院雑費18万700円+器具購入費10万1,124円+衣服・紙おむつ等6万2,529円+家屋改造費29万2,000円+専用車両購入費98万4,150円+将来の看護費用1億3,153万6,510円+将来の雑費712万9,472円+後遺障害逸失利益5,035万9,390円+入院慰謝料162万円+後遺障害慰謝料3,000万円プラス弁護士費用2,245万円)

(報告義務違反に基づく慰謝料100万円)

両親の請求額:計550万円

(精神的苦痛に対する慰謝料500万円+弁護士費用50万円)

判決による請求容認額:計2億4,005万1,230円

(治療費92万1,820円+付き添い看護費139万円+入院雑費18万700円+器具購入費10万1,124円+衣服・紙おむつ等6万2,529円+家屋改造費29万2,000円+専用車両購入費98万4,150円+将来の看護費用1億2,601万45円+将来の雑費712万9,472円+後遺障害逸失利益5,035万9,390円+入院慰謝料162万円+後遺障害慰謝料3,000万円+弁護士費用2,000万円)

両親の請求分:計440万円

(精神的苦痛に対する慰謝料400万円+弁護士費用40万円)

これらのケースのほかにも、実際に看護師に直接賠償金が請求されたケースがあります。これらの医療事故は、私たちもいつか起こす可能性が十分に考えられますよね。気になる方は、このサイトを確認してみましょう。これらのケースを見ると、「自分も賠償責任保険に入ろう」という気持ちになりませんか?

出典:医療安全ネットワーク 医療事件判決コーナー

http://www.medsafe.net/contents/hanketsu/hanketsu_0_175.html

【まとめ】

看護師が保険に加入したほうがいい理由や、実際に賠償金が請求されたケースについて紹介しました。まだ保険に加入していない方は、保険に加入することの必要性が分かりましたか?皆さんの勤務している職場でも、擦れに保険への加入が済んでいる方が多いと思います。どのような保険に加入しているのか、確認してみてはいかがでしょうか。

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