産業看護師とは?産業看護師の仕事内容となるための方法

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

皆さんは看護師として、どのような施設で働いていますか?平成28年に日本看護協会が行った調査によると、病院で勤務している看護師は全体の69.8%、診療所で勤務している看護師は全体の16.0%となっているため、全体の約75%の人は病院か診療所で勤務しているということが分かります。

出典:日本看護協会 看護統計資料 1ページ目

そのほかの就業場所で見ると介護老人福祉施設や訪問看護ステーションで勤務している方が多いですが、看護師の働く場所は病院や医療施設だけではありません。最近は、企業で働く「産業看護師」として活躍している看護師も増えています。

産業看護師はどのような看護師なのか、産業看護師になるためにはどうすればいいのか、産業看護師になるメリットなどについて紹介します。

【産業看護師とは】

産業看護師とは、企業内で働く看護師のことで、その企業で働く従業員を対象に看護を提供します。日本産業衛生学会 産業看護部会は、産業看護について「事業者が労働者と協力して、産業保健の目的を自主的に達成できるように、事業者、労働者の双方に対して、看護の理念に基づいて、組織的に行う、個人・集団・組織への健康支援活動である」と定義しています。

出典:日本産業衛生学会 産業看護部会 産業看護の定義について

現在、産業看護師として勤務している看護師は増えています。しかし、産業看護師として企業内で勤務している看護師は、看護師全体の1%未満です。

出典:看護職員の現状と推移 4ページ目

まだまだ少ないため、皆さんの知り合いに企業看護師として働いている人はあまりいないのではないでしょうか。そのため、産業看護師にはどのような役割が求められているのか詳しく知らない方が多いと思います。

産業看護師に求められる役割は以下の通りです。

疾病の概念を超えウェルネスを目指す

精神面も含めた総合的に健康な職場づくりのために、職場側の主体的かかわりを促進・支持しながら、自らも活動に主体的に関わる。

労働者の健康を見守る

産業医・精神科専門医等チームの専門職との連携をもとに、対象との関係性を築きながらメンタルヘルス支援を展開する。

全人的に把握・理解

メンタルヘルスにかかわる現象は、人と生活構造、環境などが密に関連しあいながら引き起こされるため、状況を理解し解決するために支援対象を把握・理解しアプローチする必要がある。

セルフケアを支援

従業員が生涯を通して心の健康を維持・増進することの大切さを認識し、保健行動を実現していくために手助けを行うことが大切。

コーディネータとしてのかかわり

授業員と人事労務担当者、産業医などの異なる立場の間に入り、中立性を維持しながらカウンセリングマインドを用いて全体の成熟した均衡を図る。

心を聴き、語らせる

援助者としての自己理解、自律性、コミュニケーション能力等の力量を高める努力を重ねながら、対象者に働きかけ内的成長を目指す。

出典:「職場のメンタルヘルス対策における産業看護職の役割」に関する報告書 5ページ目

【産業看護師の仕事内容】

従業員の健康診断の実施

産業看護師は、従業員の健康を管理し、維持・増進していく必要があります。その一環として、従業員の健康診断を定期的に行っているのです。健康診断の企画から実施、結果の管理を行います。また、健康診断の結果があまり良くなかった従業員に対しては、個別に面談を行い、健康状態が少しでも改善するよう働きかけることもあるのです。

時には、従業員だけでなく従業員の家族に対しても面談を行い、健康状態を改善させる雨にどのように生活習慣を変えればよいか指導することもあります。

従業員の怪我や病気への対応

従業員は、仕事中にケガをしたり、体調不良となってしまうことがあります。その時、産業看護師は企業内にある医務室で対応や処置を行う必要があります。企業内に医師がいる場合は、医師の指示に沿って処置を行いますが、医師がいない場合は看護師が自分の判断で処置や対応をしなければなりません。

重症な場合や企業内で対応の難しい場合、病院に搬送することとなります。搬送するかどうかの判断も、産業看護師が行わなければなりません。

健康相談

健康診断の結果をもとに面談を行うこともありますが、それ以外にも幅広い分野の健康に関する相談を求められることがあります。基本的には従業員が面談を希望する時間に予約を行いますが、最近は院内でのメールも普及しているので、メールで相談に乗るということもあるようです。

職場環境の改善

従業員が少しでも安全・健康に働くことができるよう、職場の環境にも注目します。労働時間や休憩時間は適切であるかということや、社内は十分に換気ができているかなど、多くのことまで注意する必要があるのです。

実際に問題が生じてからではなく、問題が生じる前に対応していく必要があります。

従業員へのメンタルヘルスケア

最近は特に産業看護師に求められている仕事内容です。複雑な仕事や仕事に対する責任感、人間関係などにより、ストレスを抱える従業員は非常に多くなっています。精神的な病気を予防するために、あるいは実際に精神面に何かトラブルが生じてしまったときに、適切に対応する必要があるのです。

また、何が原因となって精神面にストレスがかかったのかを分析し、改善するよう働きかけることも必要です。

【産業看護師になるためには】

看護師の求人を探していると、病院や医療施設などの求人はすぐに見つけることができます。しかし、産業看護師の求人を見ることはあまりないのではないでしょうか。看護師の転職サイトで産業看護師の求人を検索しても、なかなか見つけることはできませんよね。

産業看護師として働く看護師は、どのようにして求人を見つけたのでしょうか。産業看護師の求人を見つける方法を紹介します。

看護師の転職サイトで探す

看護師の転職サイトでふつうに探していても、見つけることはほとんどできません。産業看護師の求人は非常に人気が高いため、非公開となっている場合が多いのです。

産業看護師の求人を探すには、転職サイトの担当者に「産業看護師の求人を紹介してほしい」と伝えるようにしましょう。産業看護師として働くことができるのであれば、どんな条件でもいいという場合は比較的スムーズに求人を見つけることができます。しかし、給料や休日などに条件を付ける場合、求人を見つけることは難しいかもしれません。

知り合いに紹介してもらう

看護学生時代の同級生や、職場の元同僚などの知り合いの中に産業看護師として勤務をしている人はいませんか?もしいるのであれば、職場の産業看護師の中で退職者がでそうなときや、定員に空きがあるときなどに教えてもらうようにしましょう。もしかすると、紹介ということで優先的に就職が決まることがあるかもしれません。

【産業看護師に必要な資格】

産業看護師の求人をせっかく見つけることができたとしても、同時に複数の応募があれば就職できない可能性があります。少しでも就職しやすくするためには、どうすればいいのか見ていきましょう。

衛生管理者の資格を取得する

従業員が常時50人以上いる企業では、衛生管理者の免許を有する従業員を従業員数に応じて雇用しなければならないという決まりがあり、衛生管理者には「第一種衛生管理者」と「第二種衛生管理者」の2種類があります。第一種衛生管理者はすべての業種の事業場において衛生管理者となることができるのに対し、第二種衛生管理者は有害業務と関連の少ない情報通信業、金融・保険業、卸売・小売業など一定の業種の事業場においてのみ、衛生管理者となることができます。そのため、できれば第一種衛生管理者の資格を有していたほうが、就職に有利となるのではないでしょうか。

出典:公益財団法人 安全衛生技術試験協会

保健師の資格を有している場合、申請するだけで第一種衛生管理者の資格を取得することができます。ぜひ申請してみてはいかがでしょうか。

産業カウンセラー

産業カウンセラーとは、多彩な環境で働く人たちが抱える問題を、自らの力で解決できるよう援助できる専門家のことです。

出典:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会

職場での人間関係やストレスに特化している心理カウンセラーで、働く人々の心のケアを行うことが主な仕事となっています。産業カウンセラーの資格を取得後、シニア産業カウンセラーなどのスキルアップをすることも可能です。

資格を取得するには、①成年に達したもので、協会が行う産業カウンセリングの学識及び技能を習得するための講座を修了する、②大学院研究科において心理学または心理学隣接諸科学、人間関係学のいずれかの名称を冠する専攻の修了者であって、必要な単位を取得する、のいずれかの条件を満たす必要があります。

2016年に行われた試験は、合格者2,803名(合格率67.1%)となりました。しっかり対策をしておいたほうがいいでしょう。

パソコンスキル

病院で働く場合、パソコンを利用する機会は電子カルテの入力やサマリー作成の時などしかないため、パソコンが苦手でも大丈夫ですよね。パソコンで分からないことがあったとしても、他の看護師にすぐ効くことができますので、困ることは少ないのではないでしょうか。

しかし、産業看護師として働く場合、パソコンを使用する機会は非常に多くなります。ワードで文章を作成することもありますし、エクセルを利用して授業員のデータ管理をすることもあるため、パソコンは必須のスキルです。

また、病院で働いている場合は分からないことがあればすぐにほかのスタッフに確認することができますが、産業看護師の場合はほかのスタッフが近くにいない場合が多く、簡単にほかの人に確認することができません。ワードやエクセルくらいは使えたほうがいいでしょう。

【産業看護師のメリット】

産業看護師として働くと、どのようなメリットがあるのか紹介します。

土日・祝日が休みとなることが多い

病院で働いていると、土日祝日・昼夜関係なく交代制で勤務しなければなりません。ひと月の間に、一度も連休がないシフトとなることもあるのではないでしょうか。まとまった休みがなければなかなか疲れが取れませんし、夜勤を行うことで身体的にも精神的にも負担がかかりますよね。

産業看護師として働く場合、基本的に土日祝日は休みですし、日勤のみとなります。ゴールデンウィークやお盆なども、一般企業のように大型連休を取得することができるのです。カレンダー通りの働き方となるため、病院で働くよりも体への負担が軽減されるのではないでしょうか。

残業が少ない

2013年に行われた調査によると、看護師全体の約9割が残業を行っており、1か月の残業時間が「20時間以上」20.7%、「30時間以上」8.4%、「50時間以上」1.7%、「60時間以上」0.8%ということが分かりました。

出典:看護職員の労働実態調査 報告書 40ページ目

残業が長時間となると体を休めることができませんし、健康面に影響が出ることもあります。また、自分のプライベートな時間をとることもできませんよね。

産業看護師として働く場合、健康診断の時期などの限られた時期以外、残業が発生しにくいようです。決まった時間に帰宅でき、プライベートな時間を確保できるということは非常に魅力的ですよね。

【産業看護師のデメリット】

では、デメリットにはどのようなものがあるのか見ていきましょう。

給料が下がる可能性がある

看護師の給料は比較的高給と言われています。しかし、給料が多いのは残業や夜勤をしているからですよね。基本給だけであると、少ないと感じる方が多いのではないでしょうか。

産業看護師は残業をすることがあまりなく、夜勤をすることもありません。そのため、基本給しか支給されないということになります。

産業看護師として働く場合、給料は勤務する企業の規定で決められるので、事前に確認したほうがいいでしょう。

自分一人で判断しなければならないことが多い

産業医やあなた以外に産業看護師が在籍していれば、自分で判断が難しい場合に助言をもらうことができます。しかし、多くの企業では産業看護師として募集されているのが一人です。そのため、けがをした人や体調不良となった人に対し、自分一人で考えて対応をしなければなりません。

経験が浅かったり、病院での勤務経験がなければ対応に困ることが多いと思います。看護師としての知識も経験も技術も求められますので、最低でも3年は病院で勤務したほうがいいでしょう。

【まとめ】

産業看護師の仕事内容や求人の探し方などについて紹介しました。病院で勤務する看護師とは仕事内容は大きく変わるため、産業看護師としての仕事に慣れるのに時間がかかるかもしれません。しかし、産業看護師として働くことで、多くのメリットを感じるでしょう。

しかし、産業看護師の募集は病院と比較すると非常に少ないため、どうしても産業看護師になりたいという方は資格の取得を先にしておいたほうがいいかもしれません。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る