
平成24年に行われた調査によると、看護師全体の61%は病院、21%は診療所で勤務しているということがわかりました。
多くの看護師が病院や診療所で勤務をしていますね。皆さんの中にも、これらの就業場所で勤務をしているという方が多いのではないでしょうか。看護師の就業場所というと、病院や診療所をイメージする方が多いです。しかし、最近はこれらの場所以外にも看護師が活躍できる場所が増えてきました。
皆さんの住んでいる地域に、デイサービスはありませんか?在宅で過ごす高齢者が多くなっており、最近はデイサービスの需要が高まっています。デイサービスでは介護を担当するスタッフが多く在籍していますが、もちろん看護師も大切な役割を担っています。
デイサービスで働く看護師の役割や仕事内容、デイサービスで働くメリット・デメリットなどについてみていきましょう。
デイサービスとは
まず、デイサービスとはどのような施設なのか紹介します。
デイサービスとは「通所介護」と呼ばれるもので、利用者は入院等はせずに日帰りで施設に通い、通っている時間内に食事や入浴、服薬介助、リハビリなどの日常生活に必要な介護やケア、リハビリなどを受けることができます。デイサービス内でほかの利用者とコミュニケーションをとることで孤立を防ぐことができ、在宅で介護を担当している方の負担を軽減することができるなど、デイサービスの利用は多くのメリットがあるのです。
しかし、利用はだれでもできるわけではありません。要介護1~5と認定されている方や、40~64歳までの一部疾患の方のみです。また、利用料金は介護度によって異なります。
デイサービスとデイケアを混同して考えている方が多いのではないでしょうか。デイサービスは、「通所介護」ですので、日帰りでケアや介助を受けます。しかし、デイケアは「通所リハビリテーション」のことで、日帰りで医師の指示通りのリハビリを行うのです。両方介護保険サービスですが、行われるサービスは異なりますので、混同しないようにしましょう。
平成26年に厚生労働省が行った調査によると、デイサービスの施設数は全国に41,660あるということがわかりました。
出典:平成26年 介護サービス施設・事業所調査の概況 1ページ目
年々増加していますので、今後はさらにデイサービスで勤務する看護師が多くなっていくのではないでしょうか。
デイサービスで働く看護師の役割
デイサービスで働く看護師の需要は今後ますます高まると考えられます。しかし、デイサービスで働く看護師の役割があまりわからないという方も多いのではないでしょうか。デイサービスで働く看護師の役割にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
利用者の健康管理
病院で働く看護師の場合、看護師は医師の指示を受けて患者さんに対して必要な看護や処置、投薬等を行います。しかし、デイサービスは利用者さんの回復過程を支援する場所ではありません。利用者さんが他者との交流を深め、生活支援やリハビリを提供する場所です。そのため、看護師は引き続き利用者さんが在宅での生活を送ることができるよう、バイタルサイン測定や体重などを評価し、健康管理を行います。
健康状態の把握
利用者さんは、常に健康状態が一定となっているわけではありません。疾患による症状が変化することや、皮膚トラブルが生じていること、摂食・嚥下が難しくなっているなど、状態が変化していることがあります。看護師は、利用者さんの入浴中や食事中、リハビリ中などの状態をよく観察し、健康状態に変化がないかということも確認していく必要があるのです。
急変時の対応
デイサービスを利用している方は、健康状態が安定している方が多いです。しかし、デイサービスに元気に通っている利用者さんの中には、デイサービスを利用中に急変を起こしてしまう場合もあります。
デイサービスには、基本的に医療従事者は看護師のみです。そのため、急変を起こしたときは、看護師が中心となり、適切な判断をしなければなりません。病院に併設されているデイサービスであれば、医師やほかの看護師と連携をとることができるため、看護師一人いかかる責任や負担は軽減されます。しかし、併設されているデイサービスでなければ、
看護師一人にかかる責任や負担はかなり大きなものとなります。
急変時の対応を行う可能性を考えると、病院での勤務経験のある方でなければ、デイサービスでの勤務は難しいでしょう。
主な仕事内容
デイサービスでの看護師の仕事内容は、病院とは少し異なります。どのような仕事を行うのかいくつか簡単に紹介しますので、参考にしてくださいね。
バイタルサイン測定
利用者さん全員のバイタルサインを測定し、その日の入浴サービスやリハビリ、レクリエーションなどに参加できるか判断を行います。
薬剤管理
内服薬や、インスリン注射のある方に対しての内服介助や注射の実施を行います。
食事介助
利用者さんへの食事介助を行い、現在の摂食状況や食事の形態に問題がないか判断を行います。また、口腔ケアを通して、口腔内に異常がないかということも確認します。
急変時の付き添い
急変時に病院への受信が必要となった場合、利用者さんに付き添い、病院へこれまでの病歴や状況などを説明します。
デイサービスで働くメリット
デイサービスで働く場合、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
残業がほとんどない
2013年に行われた調査によると、既定の労働時間前後に時間外労働を行っている者の平均値は、「前」で各勤務共に約30分、「後」で「日勤」48分、「深夜勤務」35分、「準夜勤務」32分、「2交代勤務」32分ということがわかりました。
毎日多くの残業を行っているということがわかりますね。皆さんの中にも毎日遅くまで残業をしているという方が多いのではないでしょうか。しかし、残業時間が長くなれば長くなるほど自分の時間が少なくなってしまいますし、ストレスも大きくなってしまいます。そのため、「残業はしたくない」と考える方も多いのではないでしょうか。
デイサービスでは入院や退院の対応はありませんし、急を要する処置を行うこともほとんどありません。そのため、残業が発生しる頻度はかなり低く、定時で仕事を終えることができます。また、夜勤を行うこともありませんので、病院で働くよりも生活リズムを一定に保つことができるのではないでしょうか。
カレンダー通りに休むことができる
病院で勤務をしていると、24時間を通して看護を提供する必要があります。そのため、常勤として働く看護師はシフト制で働く必要があります。毎週決まった曜日が休みとなるわけではありませんし、毎週連休があるとも限りません。そのため、予定を立てにくいと感じる方が多いのではないでしょうか。事前に希望をすれば休みを取ることもできますが、希望できる日数に制限があったり、多くの看護師が同じ日に休み希望を申請すれば誰かが希望を取り消さなければなりません。お盆の時期やお正月などの時期は、休みの取り合いとなってしまいますよね。
デイサービスは、基本的に日曜日や祝日はお休みです。施設が休みの日は看護師も出勤する必要はありません。そのため、決まった曜日に休むことができ、予定を立てやすくなります。家庭を持っている看護師には、非常に働きやすい職場ではないでしょうか。
利用者さん一人ひとりとコミュニケーションをゆっくりとることができる
病院で勤務をしていると、あわただしい業務の中で患者さんとゆっくりコミュニケーションをとることが難しいですよね。また、患者さんの状態によってはコミュニケーションをとること自体が困難な場合もあります。「ゆっくりコミュニケーションを取りたい」と思っても、難しい場合が多いですよね。
デイサービスは、比較的に元気な方が多く利用されます。また、病院のようにあわただしくなることもほとんどありません。そのため、一人一人の利用者さんとゆっくりコミュニケーションをとることができます。利用者さんの思いや家族のことなど、多くの話をすることができるのではないでしょうか。
デイサービスで働くデメリット
デイサービスで働くにはメリットもありますが、もちろんデメリットもあります。どのようなデメリットがあるのか見ていきましょう。
看護師一人にかかる責任が大きい
病院には、多くの看護師が在籍しています。そのため、何かわからないことや困ったことがあった場合、ほかの看護師と相談して解決することができます。また、常に医師もいますので、何かあれば医師から指示を受け、対応することも可能です。
しかし、デイサービスは病院のように多くの看護師がいません。必要な看護師の人数は「専従看護師1名以上」です。そのため、自分一人で多くの利用者さんの対応をしなければならないということもあります。責任や負担が大きくなってしまいますよね。
ある程度の看護師としての経験があり、急変時の対応や最低限の医療行為ができなければ、デイサービスで看護師として働くことは難しいでしょう。
給料が下がる
2013年に行われた調査によると、フルタイム勤務の正規職員の看護師について、非管理職の2013年1月支給分の賃金額の平均は、給与総月額35万2,157円、基本給月額25万4,583円(平均年齢36.1歳)ということがわかりました。
出典:2012年 病院勤務の看護職の賃金関する調査 報告書 8ページ目
病院で勤務をしている看護師は、夜勤を行う必要があります。そのため、夜勤を行った回数分、給料はアップしますよね。また、残業代も支給されるため、多くの給料をいただくことができます。
しかし、デイサービスでは夜勤はありませんし、残業を行うこともほとんどありません。そのため、病院で勤務をしている看護師よりも給料は大きく下がってしまうでしょう。
平均的な給料をいただきたいと考えているのであれば、デイサービスではなく病院で勤務をするほうがいいですね。
医療行為のスキルが下がる
病院で勤務をしていると、毎日のように医療行為を行う機会がありますよね。勤務年数が長くなれば、その分スキルが高まり、ミスなくこなすことができるようになっていくのではないでしょうか。
しかし、デイサービスでは病院で勤務をしている時のように医療行為を行うことはありません。血糖測定やインスリン注射、服薬介助などの医療行為以外を行う頻度は大きく減少するでしょう。そのため、医療行為のスキルが下がってしまう可能性が高いです。
施設によっては、人工呼吸器を装着している方やストマケアの必要な方など、高度な医療行為が必要な方を積極的に受け入れているところもあります。デイサービスで働きながら医療行為のスキルは落としたくないという方は、このような施設で働くことを検討しましょう。
デイサービスでの勤務に向いている人
デイサービスで働くことはメリットもデメリットもあります。そのため、看護師であればだれでもデイサービスの勤務が向いているというわけではありません。どのような看護師がデイサービスでの勤務が向いているのか見ていきましょう。
ブランクのある方
ブランクのある方は、医療行為や仕事の忙しさに不安を感じている方が多いと思います。デイサービスは医療行為を行う機会は少ないですし、病院のような忙しさはありません。そのため、ブランクのある方も安心して復帰することができるのではないでしょうか。
子育て中の方
子育て中の方は、お子さんが保育園や学校に通っている時間内だけ働きたいという方が多いですよね。病院で働く場合、予期せぬ残業が発生しがちです。しかし、デイサービスは残業が発生しにくいため、残業を気にせずに働くことができます。
コミュニケーションをとることが好きな人
デイサービスは病院のようにあわただしく仕事を行うことは少ないです。そのため、利用者さん一人一人とゆっくりコミュニケーションをとることができます。ゆっくりコミュニケーションをとることが好きな方にはオススメの職場ではないでしょうか。
まとめ
今後はますますデイサービスの需要が高まると考えられます。そのため、デイサービスに勤務する看護師も増加していくのではないでしょうか。デイサービスで働く看護師のメリットやデメリットをしっかり理解して、興味のある方はデイサービスで働くことを検討していてはいかがでしょうか。