治験で働く看護師の仕事内容とメリット・デメリット

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平成24年に行われた調査によると、「病院」で働く人は全体の61%、「診療所」21%、「介護施設等」10%、「訪問看護ステーション」と「学校等」が2%となっているということが分かりました。

出典:看護職員の現状と推移 4ページ目

ほとんどの看護師は、病院・診療所・介護施設等で勤務しているということが分かりますよね。大多数の看護師が病院で勤務をしていますが、中には治験に関する業務を行っている看護師もいます。治験に関する業務を行う看護師の仕事内容やメリットなどについてみていきましょう。

治験とは

まずに、「治験」とは何か見ていきましょう。化学合成や海洋生物などから発見された物質の中から、実験によって病気に効果があると考えられるものが「くすりの候補」として選ばれますが、開発の段階で健康な人や患者さんの協力によって、人での効果と安全性を調べることが必要です。人における試験を一般に「臨床試験」といいますが、「くすりの候補」を用いて国の承認を得るための成績を集める離床試験は特に「治験」と呼ばれます。

治験は病院で行われますが、治験を行う病院は「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」という規則で定められた以下の要件を満たす必要があるようです。

  • 医療施設が十分に整っていること
  • 責任をもって治験を実施する医師、看護師、薬剤師がそろっていること
  • 治験の内容を審査する委員会を利用できること
  • 緊急の場合には直ちに必要な治療、処置が行えること

出典:厚生労働省 治験とは

治験に参加するには、行われる治験対象者の条件を満たす必要があります。そのため、誰でも参加するということはできません。患者さんを対象とした治験もありますが、中には健康な人を対象とした治験もあります。治験に要する期間は、その内容によって異なります。糖尿病や高血圧などの慢性疾患の場合は3か月程度を要することが多いですが、1年近くかかるものもあるようです。

治験で働く看護師って?

看護師の資格は、多くの医療現場で生かすことができますが、治験の現場でも生かすことができます。治療業務の現場において、全体を統括する役割を担うスタッフのことを「治験コーディネーター(Clinical Research Coordinator =CRC)」といいますが、治験コーディネーターは看護師の資格を生かすことができるのです。

治験コーディネーターは、医師の指示の下で治験の目的や可能性のある副作用について、患者さんが十分に理解できるように説明するとともに、治験実施計画書の内容を十分に理解して治験参加者の服薬状況や副作用の発生について常に調査していく必要があります。特別な資格は必要りませんが、医療に関する知識が必要であるため、看護師や薬剤師、臨床検査技師などの医療系の資格を取得している方が治験コーディネーターには多いです。患者さんや医師などの医療関係者と円滑にコミュニケーションをとる必要があるため、医療関係者の中でもコミュニケーションスキルの高い看護師が採用されやすい傾向にあります。

治験コーディネーターの仕事内容

あまり馴染みのない治験コーディネーターですが、仕事内容は多岐にわたります。治験開始時から終了時まで多くの業務があるため、どのような仕事をしているのか見ていきましょう。

治験の準備

まずは、治験コーディネーターが行われる治験の内容をしっかりと把握しておかなければなりません。製薬会社の臨床開発モニターが開催する勉強会で治験薬や治験実施計画書(プロトコール)の説明を受け、どのような治験が行われるのか確認します。事前にプロトコールの内容を把握し、勉強会の中で疑問点や不安なことはすべて解消できるようにしておかなければなりません。

治験開始前に製薬会社が治験を担当する医師や治験コーディネーター、薬剤師、臨書検査技師などに対して説明が行われますが、(スタートアップミーティング)。この際、治験コーディネーターはミーティングのサポートなどを行います。

検査機器類や検査キットなどの治験に必要な物品が病院に製薬会社から搬入されれば、治験コーディネーターは受け取りや内容確認、在庫管理などの管理を行うとともに、治験の参加者が来院したらすぐに検査を行うことができるように準備もしておかなければなりません。

治験実施中

準備ができれば、次は治験への参加者を探さなければなりません。被験者のスクリーニングは、プロトコールの基準に合う人でなければならないため、該当者に会いに行ったり、来院予定であれば同席したりして対応し、治験の詳細を説明します。治験に参加する方を探す方法は、医師からの紹介や広告を利用する方法などがありますが、その中から治験に参加できる人を探さなければならないため、非常にプレッシャーのかかる業務といわれているようです。

基準を満たした方が見つかれば、治験責任医師が治験の参加者に対しインフォームド・コンセントを行いますが、その際も治験コーディネーターが同席し、治験内容や治験のスケジュール、副作用などについて説明をします。医師や治験コーディネーターが行った説明に同意した方のみが治験の参加者となるのです。治験の対象者へ渡す説明文や治験参加の同意書は治験コーディネーターが作成します。治験対象者のスケジュール管理を行うことも治験コーディネーターの大切な役割の一つです。確実にスケジュール通りに治験を進めることができるよう、分かりやすいように作成されたスケジュール表をわたし、時には電話連絡を行うこともあります。

治験がきちんとスケジュール通りに進んでいるか治験を依頼した製薬会社が確認することもありますが、その際の対応も行いますし、治験中に何らかの副作用が生じた場合の対応も、治験コーディネーターが行います。

治験終了後

治験が終了すると、治験を実施した医療機関に提出する「治験終了報告書」の作成を補助します。正確で確実な報告書を速やかに提出しなければなりませんので、常に治験の状況を把握しておかなければなりません。また、依頼された症例数を予定期間よりも早く終了した場合、症例の追加を依頼されることがあります。追加症例を集めることができれば評価が上がりますので、いかに短期間で治験の対象者を探すかが大切です。

治験コーディネーターの給料

2013年に行われた調査によると、フルタイム勤務の正規職員の看護師について、平成24年分(2012年1月~12月)の年収額の平均は、非管理職519万2,417円(平均年齢35.0歳)、中間管理職648万4,444円(平均年齢45.5歳)ということが分かりました。

出典:2012年 病院勤務の看護職の賃金に関する調査 報告書 10ページ目

治験コーディネーターの給料は、看護師の給料よりも高いのか気になりますよね。

治験コーディネーターの給料は、看護師のような調査が行われていないため平均を出すことはできませんが、多くの病院では年収350万円~500万円の年収となっているようです。もちろん、治験コーディネーターとしての経験や、医療関係の資格の有無、働く地域によっても異なります。しかし、看護師の給料が高いのは、夜勤を行っているからですよね。治験コーディネーターの場合、夜勤を行うことはありません。2交代制勤務で夜勤手当が1回1万円と仮定した場合、1か月の夜勤回数4回×1万円×12か月=年間の夜勤手当額は48万円となります。夜勤手当額を考えても給料は看護師のほうが高いですが、夜勤による身体的・精神的負担を考えると、治験コーディネーターのほうが魅力的に感じませんか?

看護師の場合、年間に一定額の昇給がありますが、その金額は微々たるものですし、そのほかで給料が上がることはほとんどありませんよね。治験コーディネーターの場合、看護師以上の昇給額が設定されている病院も多いですし、治験業務を自分一人で進めることができるようになると、さらに年収がアップします。治験コーディネーターとして働く方の中には、年収が1,000万円に近い方もいるようですので、収入面で治験コーディネーターへ転職を検討する場合、首都圏の大きな病院を狙ってみてはいかがでしょうか。

治験コーディネーターとして働くメリット

治験コーディネーターとして働く場合、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

カレンダー通りに休むことができる

看護師として働いていると、なかなかカレンダー通りの休みを取ることはできませんよね。特に病院で常勤として勤務をしている場合、24時間を通して患者さんの看護を行う必要があります。そのため、日勤だけでなく夜勤も交代制で行わなければなりません。また、予定があれば事前に申請して休み希望を出すこともできますが、希望数の制限がありますし、希望者が多ければ抽選となってしまうことも珍しくはありませんよね。

治験コーディネーターとして働く場合、一般的な勤務は月~金曜日の平日だけです。しかも、年末年始やお盆、ゴールデンウィークなどの長期休暇も、カレンダーの通りに休むことができる場合が多いです。看護師として働いていると、長期休暇を取得できる機会はほとんどありませんよね。カレンダー通りの休みだと旅行などの予定も立てやすいですし、ゆっくり体を休めることができますので、大きなメリットと考えることができるのではないでしょうか。

夜勤がない

先ほども書きましたが、病院で勤務する看護師は24時間を通して患者さんへ看護を提供します。そのため、二交代や三交代制勤務を行う必要がありますよね。夜勤は少ない人数で多くの患者さんを担当するためハードですし、眠気からミスを誘発してしまうことも少なくありません。また、小さなおお子さんのいる方の場合、預け先の問題などもなるのではないでしょうか。「できれば夜勤はしたくないけど、常勤として働きたい」と考えている方も多いですよね。

治験コーディネーターとして働く場合、看護師の資格を持っていたとしても看護師として働くことはありません。その病院で勤務する看護師が24時間患者さんの看護を行いますので、治験コーディネーターは夜勤を行う必要がないのです。そのため、病院によって異なりますが、平日の9時~18時が勤務時間となります。

常勤として働くのに、夜勤をしなくてもいいということは非常にうれしいですよね。

コミュニケーション能力を高めることができる

看護師として働いていても、患者さんや看護師都だけでなく、多くの医療関係者や患者さんの家族とコミュニケーションをとります。そのため、勤務をする中でコミュニケーション能力を高めることができますよね。

治験コーディネーターは、医療関係者や患者さんだけでなく、治験を依頼した製薬会社や各検査を行う専門スタッフなど、多くの関係者とコミュニケーションをとっていかなければなりませんし、スケジュールの調整や事前の打ち合わせなど、コミュニケーションをとる機会はかなり多いです。あらかじめある程度のコミュニケーション能力は必要ですが、仕事を行う中で高めることができます。

また、調整や打ち合わせを行うときには「ビジネスとしてのコミュニケーション」が必要となることもあります。看護師として働いていると、なかなかビジネスとしてのコミュニケーションを学ぶ機会はありませんので、いい経験となるのではないでしょうか。

治験コーディネーターとして働くデメリット

メリットもありますが、もちろんデメリットもあります。どのようなデメリットがあるのか見ていきましょう。

看護師としてのスキルが低下する

治験コーディネーターと看護師は、全く別の職種です。そのため、看護師として働くことはありません。病院で看護師として働いていると、毎日のように医療行為や患者さんのケアを行いますが、治験コーディネーターはこれらの業務を行うことがありませんので、看護師としてのスキルが大きく低下することが考えられます。

事務仕事が多い

普段勤務をしていると、事務仕事は事務担当のスタッフが行います。看護師がパソコンの操作をする場面というのは、電子カルテの記入やサマリー作成、勉強会の資料つくりなど、限られていますよね。

治験コーディネーターは、スケジュールの管理や資料の作成、報告書の作成など、様々な書類を作成する必要があります。ただ文章を打つだけでなく、計算ソフトやプレゼンテーションソフトを利用して資料を作成しなければならないこともあるようです。そのため、非常に高い事務能力も求められます。

治験コーディネーターとして就職した段階である程度の指導はありますが、最低限のパソコンスキルがなければ、仕事についていくことは難しいかもしれませんね。

SMOで働く場合、勤務地が年に2~3回程度変わる

病院で勤務する場合、勤務先は採用された病院です。しかし、治験施設支援機関(SMO)へ所属している場合、治験が行われる病院へ派遣されます。1つの治験が終了すれば次の治験を担当するため勤務する病院が変わりますが、3か月~1年毎に勤務地が変わるようです。多くの場合、自宅や所属するSMOの場所から1時間以内の範囲にある病院を担当しますが、場合によってはもっと遠い場所にある病院で働くことも考えられます。

同じ場所で継続して働くことを希望するのであれば、病院に所属する治験コーディネーターを目指したほうがいいでしょう。

まとめ

看護師の資格を生かして働くことのできる「治験コーディネーター」という仕事位ついて紹介しました。馴染みのない仕事かもしれませんが、看護師から転職をすることで、多くのメリットを得ることができるのではないでしょうか。

特別な資格は必要ありませんので、興味のある方は治験コーディネーターへの転職を検討してみてもいいかもしれませんね。

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